研究系及び研究施設の現状 203
田 中 彰 治(助手) (1989 年 4 月 1 日着任)
A -1)専門領域:非ベンゼン系芳香族化学、分子スケールエレクトロニクス
A -2)研究課題:
a) 大型分子内における単一荷電キャリアーの外的制御原理の探索 b)各種基板表面における鎖状大型分子の合目的分子配列に関する研究
A -3)研究活動の概略と主な成果
a) 本研究は,単一大型分子内に合目的な量子井戸構造を構築し,個々の荷電キャリアーの保持と移動の外的制御を行 なうこと(単一分子内電子回路)を目指すものである。パイ共役分子鎖内の荷電キャリアのサイズはおよそ 2 nm長 程度とされ,よってその整数倍,半整数倍の分子鎖長をもつ被覆型分子群の一般的合成法をまず開拓してきた。本年 度では,約 30 nmまでの被覆主鎖( 1 nm 刻みで指定可)にアリゲータクリップ型アンカー,平面接合型アンカー,側 鎖副アンカー等を導入(位置は両端,片端,真ん中も指定可能)するスキームを確立した。現在,四つの分子計測グルー プの四種のナノギャップ電極系における計測実験上の要求に応じ,適当な分子サイズとアンカーを組み合わせたモ ノを供給,またはフィードバックをうけて修正合成を進めている。さらに次の研究ステージに進むため,「場所とサ イズと深さを指定できるポテンシャル井戸の構築法」についても検討を行なった。現在までに,5–12 nm長の主鎖の 中央部に1–2 nm長の低エネルギーギャップ部位(特に L UMO レベルに段差が大)の選択的導入に成功している。井
戸の複数個導入による分子内バリアの構築を現在進めている。
b)本項目は,横浜市大・横山Gとの共同研究に基づく。嵩高いブロック状置換基と長鎖状の置換基を合せもつオリゴ マー分子は,分子形状に明確な凸凹構造を有するため,従来明瞭な観測が困難であった分子内配座異性体や鏡像異 性体の識別が容易であることを明らかにした。またこの凸凹構造のため,従来の鎖状分子では認められなかった分 子集合様式も観測できた。本年度は,この知見をベースに新たな大型分子組織化戦略を確立するため,凸凹構造を有 する一連の中・大型鎖状分子をパルスジェット法により各種基板に定着させ,その分子内配座と分子配列について 検討を始めた。パルスジェット法の実験条件確立まで時間を要しているが,現在10 nm 長級分子の単一分子観測ま で成功している。
B -7) 学会および社会的活動 学会の組織委員
分子研分子物質開発研究センター・特別シンポジウム「分子スケールエレクトロニクスにおける新規分子物質開発」主催 者 (1998).
応用物理学会・日本化学会合同シンポジウム「21世紀の分子エレクトロニクス研究の展望と課題―分子設計・合成・デ バイスからコンピュータへ―」日本化学会側準備・運営担当 (2000).
第12回日本MRS学術シンポジウム:セッション H「単一電子デバイス・マテリアルの開発最前線∼分子系・ナノ固体系の 単一電子デバイス∼」共同チェア (2000).
F irst International C onference on Molecular E lectronics and B ioelectronics 組織委員 (2001).
204 研究系及び研究施設の現状 B -10)外部獲得資金
一般研究(C ), 「多段階酸化還元系を含む真性伝導π共役ポリマーの創出」, 田中彰治 (1994年 -1995年).
基盤研究(C)(2), 「定序配列・低エネルギーギャップ型高次ヘテロ環π 共役オリゴマーの構築」, 田中彰治 (1996年 -1997年). 基盤研究(C )(2), 「高度の電子輸送能を有するナノスケール単一分子電線の創出」, 田中彰治 (1998年 -1999年). 基盤研究(C )(2), 「シリコンナノテクノロジーとの融合を目指した機能集積型巨大パイ共役分子の開発」, 田中彰治 (2000年- 2001年).
C ) 研究活動の課題と展望
実のところ何を測っているのか良く分からないかも… … というのが単一分子伝導度計測実験の最大の問題点である。何故 そんなのが報告になるのか不可解であるが,人のことは言わないでおこう。分子+基板の計測試料系自体を「必要以上… … 」 と言われるほど吟味,洗練するというアホな努力を行なうのみである。本研究では,単一分子伝導度計測系の実空間観測を
必須条件とし,そのための技術的無理難題は須くナノギャップ電極作成者,ナノ領域観測・計測者,分子開発者の各々が, 自らの出身分野の誇りにかけて粉砕する約定になっている。あとには引けぬのである。